製品を探す
サイト内検索
他社型式・Quickコード検索
製品を探す
Quickコードカタログの
4ケタコード

【7】LED照明の更なる性能向上を目指して

マシンビジョンでLED照明を採用する上でのさまざまな利点を上げたが、さらなる性能向上のために、いくつか改善したい課題がある。

7.1 LED個々の明るさのバラツキ

ひとつは複数光源の集合であるがゆえの個々の明るさのバラツキである。原因のひとつはLED個々の光度のバラツキである。これにはLEDメーカが光度測定による選別を行い、ランクを設けることで同一ランク内でのバラツキ幅を小さくすることで対応している。

もうひとつは順電圧のバラツキである。LED照明は通常数個直列に接続し、これを複数並列で接続した回路で構成されている。順電圧のバラツキによりこの並列回路間で電流値の違いが生じ、結果明るさのバラツキとなっている。

7.2 温度変化による明るさの変動

LEDは点灯により発光層の温度が上昇し、温度が高くなるほど発光効率は低下する。特に赤色で顕著に低下する。これまではLEDチップから筐体までの熱抵抗を下げたり、筐体の表面積を増やして熱放射を増やして温度を下げる等の放熱対策を行ってきた。それでも満足のいく十分な効果は得られていなかった。

7.3 長期的な輝度劣化に対する明るさの管理

LEDの性能が向上し寿命も飛躍的に延びた。最近のLED単体では4万時間で30%の光度低下と言われている。マシンビジョンシステムでは照明が一定の明るさレベルを維持することで、画像処理の性能を担保している。よって長期的な光量の低下には調光値の調整によってそのシステムを維持している。LED照明は高速な応答性でON/OFF制御が可能であるため、必要なタイミングのみ点灯することで、点灯の積算時間を短くし光量の低下を遅らせている。しかし調光値の調整が不要になるわけではなく、ユーザはシステム維持のための明るさ管理を避けて通れない。

これらの課題解決に向けて、より高精度な調光設定および明るさ管理に対するオプテックス・エフエーの取り組みについて紹介する。

【8】センシング照明による課題解決


図17  センシングリング照明 OPRシリーズ

照明の新たなセンシング技術が、従来の課題を解決しつつある。最近の技術動向として具体例として、センシングリング照明“OPRシリーズ”を例に紹介する。

8.1 明るさ変動安定化回路の「FALUX(ファルクス)」搭載

先に上げたLED個々の明るさのバラツキに対する対策として、順電圧にバラツキがあっても一定の電流が流れるように、照明に入力電圧依存型の定電流回路を内蔵した。これは入力電圧から各並列回路の電流を制御するカレントミラー回路により、それぞれ一定の電流値が流れるようにするものである。これにより並列回路間の電流バラツキがなくなり、個々のLEDに同じ電流が流れて明るさのバラツキもなくなった。

電流を一定にすることで明るさのバラツキはなくなったが、LEDの特性でもある自己発熱や周囲温度の上昇による発光効率低下の問題が残る。赤色LEDでは温度による発光効率の低下が大きく、20%程度明るさが低下していた。


図18  FALUX有無の内部温度と明るさの変動

温度による明るさ変動の解決方法として、照明に温度補償回路を内蔵した。これはLED照明の色毎に異なる温度変動特性により、電流値の調整で明るさを補正するものである。これにより温度による明るさ変動は1~2%程度となり、従来品比1/20まで変動を抑えることができ業界最高水準を達成している。

これら入力電圧依存型定電流回路と温度補償回路をあわせて“FALUX(ファルクス)”と呼んでおり、特許出願中である。

【9】輝度管理と長期安定性

センシング照明は、照明にフォトダイオードを搭載してLEDの光をセンシングする回路を内蔵している。これにより自身の輝度をモニタリングすることが可能となる。さらにそのモニタ値からフィードバック制御により約4万時間もの長期の輝度安定が可能となる。


図19  センシング回路とアタッチメントレンズ

9.1 「FALUX sensing(ファルクス・センシング)」で輝度のモニタリングと
フィードバック制御


図20  ALUX sensing

先に述べた「FALUX」の温度補償回路は時間軸として秒から分単位の変動を抑え、明るさを安定させるものであった。しかしLED照明は数万時間という長期にわたり使われるものであり、長寿命のLED照明とは言えLEDの劣化により4~5万時間で輝度は半減する。この長期にわたる輝度の安定を行うのが「FALUX sensing」である。「FALUX sensing」は次の3ステップによって実現される。

1 センシング
照明に内蔵したフォトダイオードで輝度を測定
2 モニタリング
コントローラ側で輝度の測定値を表示
3 フィードバック
輝度の変動を電圧調整により安定化

照明の明るさをセンシングし、コントローラの表示パネルに輝度を表示することで、外部機器や測定器を用いずとも輝度をモニタリングすることができる。さらには工場出荷時の明るさを維持するために、モニタ値が安定するよう出力電圧を調整するフィードバック制御が可能となる。これにより長期の使用でも輝度の変動を1%程度に抑えることができる。また、フィードバックは長い延長ケーブル使用時の電圧降下による輝度低下を補正することにも有効に作用する。「FALUX」が内部温度パラメーターによる静的制御とすれば、「FALUX sensing」は複数のパラメーターの変動による輝度変化を、フィードバックにより安定させる動的制御と言える。

照明は従来どおりの2ピンのコネクタを採用し、この2線により電力供給とデータ通信を行う電力線通信を実現している。

9.2 照明毎の器差を調整することが可能に

LED照明は同じ機種でも明るさにある程度のバラつきがあり、これをコントローラの調光設定により調整して使われる。よってコントローラ側で同じ調光値に設定しても、同じ明るさになるとは限らない。複数装置で同じ照明を使う場合などで、それらを同じ輝度に設定するには照度計など外部の測定器を使って設定するほかなかった。

そこで機種固有の絶対輝度を照明内部メモリーに格納し、この絶対輝度が同じ値になるように調光することで、照明間の器差を容易に調整することができるようになった。