このようにIO-Linkという規格自体は非常に優位性があり、自動車業界をはじめ国内の生産現場で導入が進みつつある。ただ一部ラインでのテスト導入というケースも多く、各社、各ラインへの浸透はまだこれからというのが実態である。
そこで当社はIO-Linkマスタの開発にあたってユーザへのヒアリングを実施。結果、「機器のコスト」「NPN未対応」の2点が、特に国内での普及のハードルとなっていると考えた。こうした点を解決すべく開発したのがURシリーズである。
IO-Link機器関連のコストは、導入するIO-Linkマスタの台数に左右される。現在、市場で販売されているマスタは4及び8チャンネルだが、PLCのリモートIOユニットとして標準的な16チャンネルが、マスタのコストパフォーマンスを高めることができると考えた。
従来、8チャンネル以下のIO-Linkマスタしか存在しなかった背景としては、IO-Linkに使われているチップの仕様が関係する。IO-Linkでは全チャンネル同時に一対一通信が求められるが、従来の回路構成ではCPU負荷がかかり過ぎた。そこで当社では業界初のFPGAによるIO-Link通信処理を行うことで、世界最多となる16チャンネルでの独立通信を可能とした。これにより、マスタ一台あたり16台のデバイス機器と接続が行え、マスタの台数を1/2に抑えてコスト削減に貢献することができた。
従来から市場に存在するIO-Linkマスタの入出力仕様はIO-LinkとPNPのみであり、NPN対応の製品は存在しなかった(開発当時)。これに関しては、欧州生まれのIO-Linkではその仕様書にNPNのことが触れられておらず、当初から日本・アジア諸国で使用されているNPNを想定していなかったと考えられる。
このような背景から、IO-Linkを現場に導入すると、その現場で使用するセンサはIO-Link対応機種以外もPNP仕様に揃えざるを得なかった。そうなると、他のラインで使用するNPNのセンサとは使い回しができず、保守メンテ部品が増え、コストが増大する。そのため、NPNセンサユーザからは、長らくNPN対応のIO-Linkマスタが待ち望まれていた。
こうしてNPN入出力に対応すべく独自開発したURシリーズは、IO-LinkマスタとしてのみならずNPN/PNP入出力をも混在して自由に割り付けて使用できるリモートI/Oとなった。接続機器の個別設定を、1チャンネルごとに入力/出力/NPN/PNP/IO-Linkの中から自由に選定して割り付け可能となる。これによりIO-Linkで全チャンネルを使用できなくても、残りのチャンネルで他のI/O機器も接続できる。結果、I/O ユニットやアナログ入出力ユニットの台数も抑え、装置の小型化に寄与できるようになった。
本体左側に表示灯・操作ボタンを配置
今回上記両ネットワークにマルチプロトコルで対応。本機メニューからフィールドネットワークの切替えが簡単に行える。2021年にはEthernet/IP、EtherCAT、PROFINET、Ethernet/TCP、CC-Link IE Field Basicに1台で対応する製品のリリースを予定。
マスタ本体に、有機ELディスプレイと操作ボタンを搭載。PCやHMIを使用せずに、接続したIO-Linkデバイスのパラメータ設定が可能。表示灯も搭載し、メンテナンスやエラー情報の確認が可能。
ディスプレイの言語は、本機メニューから切替えが可能。10言語に対応し、IO-Linkの標準エラーコード、イベントコードであれば自動的に各言語のメッセージに変換して表示できる。
IO-Linkマスタとして業界最速となる最小サイクルタイム0.3msを実現(従来製品は1~2ms)。IO-Link機器の応答速度の課題を解決した。
標準的なIO-Linkマスタ(8チャンネル)の約1/2サイズ(W110×D31.4×H63mm)を実現。チャンネル数は倍となるため装置内の省スペース化に貢献。
当社では、IO-Linkマスタの発売と同時に、業界標準サイズの「アンプ内蔵光電センサZ4シリーズ」、TOF方式で安定した距離測定が可能な「超小型レーザ距離センサTOF-DL250GC」、ファイバセンサや変位センサをIO-Linkに接続できる「IO-LinkゲートウェイUC2シリーズ」を同時に発売。今後、IO-Linkデバイスも拡充していく。
左からZ4シリーズ、TOF-DL250GC、UC2シリーズ
オプテックス・エフエーは、FAセンサメーカーとして、今後も独自技術で製造現場のIO-Link導入を加速し、センサレベルのデータ活用促進に貢献していく。