リニアイメージセンサは、その画素数が多いほど高い繰返精度が得られると期待しがちであるが、画素数が多すぎるとその読み取りに多大な時間を要し、サンプリング周期が上げられない。また、変位センサ自体を小型化する為にはリニアイメージセンサも小型化が必要で、小型パッケージ+多画素の組み合わせは1画素の微小化(=低感度)を招く為、実際にはトータル性能を上げる事ができない。
CD5は極端な多画素化を行わず、代わりに専用の高速演算処理ユニットにより、画素間を65536分割で認識するサブピクセル処理を行っている
投光したレーザがほぼそのままの強度で反射する鏡面体から、ほとんど光を反射しない真っ黒な対象物まで、どのような対象物でも一定の条件で受光波形を得るには広大なダイナミックレンジと、繊細な蓄積時間のコントロールが必要となる。CD5はこれを高分解能電子シャッター(サンプリング周期の1/485ステップで制御)と、サンプリング周期(100〜3200μs)を統合制御することで実現している
現実の測定対象物の中には、表面状態の良くないものが少なくない。荒いヘアラインを持った金属面や、光の一部が透過してしまう半透明体などである。
これらの対象物にあっても、正確に受光波形のピーク(=集光点)を認識できるように、独自のアルゴリズムを用い、ワークの表面状態が測定値に与える影響を限りなく少なくしている
CD5でガラスを測定すると、
CD5をはじめ、多くの高性能レーザ変位センサは、センサヘッドとコントローラが分離した形態をとっている
。これは多様な機能やインターフェースをセンサヘッドに搭載するとセンサヘッドが非常に大型化してしまうことや、センサヘッドは機器に組み込み、手元で測定値の確認や設定の調整などを行い易くする為のものである。しかしながら、機器組み込みのユーザーには、コスト、設置場所などの理由でコントローラを必要としない場合があり、この要求に応えるため、(1)センサヘッド側に変位測定の基本機能を搭載 (2)センサヘッド-コントローラ間を汎用の通信形式(RS422)とし、通信仕様をユーザーに公開することにより、これを実現している
。CD5コントローラとパソコンをUSBもしくはRS232で接続する事により、全ての設定の読み込み、設定、測定値のデータロギングができるソフトを用意している
CD5シリーズはレーザ光を幅広にし、細かなギャップを無視して平均値を測定するワイドスポットタイプや、2000±500mmの業界最長距離を実現したウルトラロングレンジタイプもラインアップしている。さらに1台のアンプにセンサヘッドを3台まで接続、自由に演算可能な演算機能など、いっそう幅広い業界に対応できる変位センサとなっている。
ここ10年でレーザ変位センサの精度、速度、機能は飛躍的に上昇したが、アプリケーションによっては必ずしもその全てが要求されるわけではなく、とりわけローコスト化の要求は常に存在する。CD5シリーズに搭載された高精度の測定機能を引き継ぎ、機能面を必要最小限まで削り小型、ローコストを徹底させたのがCD33シリーズである。
温度変化や振動・衝撃などで光学系などに歪みが生じると、それは即誤差要因となる為、一般的に高精度変位センサには金属筐体が使用されるが、CD33シリーズにはローコスト化と軽量化を目的にスーパーエンジニアリングプラスチックであるPPS(ポリフェニレンスルファイド)を使用している。また、各部にかかる応力を徹底的に排除した形で校正、出荷される為、金属製に迫る安定性を確保している。
変位センサとユーザー装置のインターフェースは、アナログ電流(4-20mA)、アナログ電圧(0-10Vなど)、シリアル通信(RS422など)、ON/OFF(オープンコレクタ)など様々だが、これらインターフェース毎に製品をラインアップし、ユーザーにとって一切無駄のない構成としている。
従来は色や材質の影響を受けるとされていたレーザ変位センサは、ここ10年で飛躍的な進歩を遂げ、よりユーザーの期待に応えられる製品へと進化してきた。しかしながらFAの現場は1つ1つ全て条件が異なり、ユーザー毎の改良やカスタマイズが必要な例は数多くある。
我々は今後もユーザーの期待に応えられるよう、スローガンである「高品質、だけど低価格。」を具現化した製品を提供し続けると共に、個々のお客様に、小回りの利くメーカーとして開発を続けていく所存である。
「計測技術」〈日本工業出版〉 2010年7月号(Vol.38 No.8)寄稿原稿