次世代ファイバアンプ
「D4RFシリーズ」開発ストーリー
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他社に負けない製品を
望む声がきっかけに
− 「D4RF」開発の経緯は?
D4RFの前身となるセンサは10年以上前の製品で、検出距離や操作性など、他社に負けない製品がほしいという要望に応えるため、新たな製品を開発することになりました。機構設計と電気設計から6名が集まり、2019年後半にスタートしました。
まず、どういうところが競合製品に対して劣っているか、それに対して何を改善するかを、チームリーダーレベルで検討して、「電気でこんな改善ができないか」「機構でこんな改善ができないか」というのをそれぞれの担当者に検討してもらうところからスタートしました。
元々産業用センサは機能性重視であり、デザインは重要視されていない傾向にあるのですが、今回の製品は機能性はもちろんのこと、デザインにもこだわろうというコンセプトでスタートしています。
機能面では「防水機能の実現」「安定性向上」という大きな課題もある中で、デザイン面との両立ということで機構・光学設計はがんばっていただきました。
妥協することなく、
機能やデザインを追求
− 今回の製品開発プロジェクトでこだわったところは?
「防水機能の実現」のため、連結部の構造は結構ぎりぎりまで試行錯誤を繰り返しました。
あとは製品の組み立てに関しては、工場で生産する時に組み立て辛いという箇所があったため、何度も改善を行いました。また「最初あまりかっこよくないデザインだな」と思いながら設計していまして、途中で大幅にデザインを変更したという経緯があります。
最終的に、最初とかなり違うデザインになりました。
私は今回、内部の基板設計を主に担当しました。
これは電気設計者の担当なのですが、機構・光学設計と電気設計の橋渡しのような役割を基板設計が担うので、「こんな形でこの寸法以内に全部載せてください」という要望に応えつつも、余計なノイズを出してはいけないなど、結構厳しい条件の設計の積み重ねになりました。
電気設計での改良点の一つは表示部分で、今まで7セグ(7セグメントディスプレイ)で表示する表現力に欠けるものだったのですが、今回OLED(有機発光ダイオード)という有機ELのディスプレイを搭載して、文字が見やすいようにしました。
あとは、温度の影響を極力受けない安定した検出ができるようにしてほしいという改善要望が多かったため、新製品はマイナス25℃から55℃まで温度が変化しても、検出距離の変動がより少なくなるよう改善しました。
私はソフトウェア担当で、中途入社後初めてセンサの開発プロジェクトに参画しました。
センサの開発では、実際の機器で試してみないとわからないことがたくさんあって苦労しましたが、逆に言うとそこが一番おもしろかったところでもあります。パソコン上で動くソフトウエアを作るのなら、不確定部分はすごく少なくて、コードを正しく書けばその通りにしか動かないのですが、センサではそうならないんです。例えば0か1かではなく、アナログ的に変化する信号を扱うのでそれを安定して処理する工夫が必要でした。
あとはボタンを押した時に画面が変わるタイミングなどの、UI(ユーザーインターフェース)/UX(ユーザーエクスペリエンス)の部分は、今まであまり重要視されていなかったのでかなり改善したと思います。説明書を見なくても使えるiPhoneのように、ボタンが少ないUI/UXにどうしたら近づけるかという点で以前より良くなったと思います。
私は設計したものを試作する上で必要な部品を準備したり、作成されたソフトウェアが正しく動いているか、バグ(不具合)がないかといった動作確認を行いました。
既存品に比べて機能が増えたため、決められた期限内に確認作業を行うことや、他の業務をしながら、期日までに試作のための沢山の部品を準備するのは大変でした。
このプロジェクトと他の業務のバランスをとりながら、いかに効率よく仕事を進めていくかというのは大変でしたが、とても良い経験ができたと思います。
この製品は今後当社の命運を担っていくと個人的に思っていますので、一つ一つを妥協してはいけないという思いがありました。
その中で、今回有機ELディスプレイを搭載した際に、当初使われていたフォントに違和感を覚えていました。
私は営業担当なのですが、こちらから開発の方に文句を言うだけではいけないと思い、色々な方と相談したところ、開発の役員の方から「フォントの自作は、営業でもやればできるからちょっとやってみないか」と言われて、専用ソフトを使ってフォントを自分で作ってみることにしました。
実際にやってみるととても緻密な作業で、日々開発の方がこんなに苦労されているのだな、ということがわかりました。これまでそういう経験は一切なかったのですが、自作したフォントが実際にセンサに表示されて動いているのを見て感動してしまいました。
実際に、お客様に製品を売るのは営業の方なので、やはり「この製品を売りたい」という、営業のモチベーションを上げる製品を作らないといけないと思います。
営業、開発の思いが
新製品として結実
− 今回のプロジェクトでやりがいや達成感を感じたこと、
印象に残っていることは?
これだけ多くの方々と関わるプロジェクトはなかなかないので、とても良い経験になりました。 これから私が設計する際に生かせる多くのことを学べたと思います。
主力製品になるような機種の開発に携われたこと、初めてセンサの開発に携われたことはとても良い経験になったと思います。
基板設計の物理的な制約の厳しさですね。
最新の機能を持つ電子部品はどんどんサイズも小さくなってきて、それに伴ってピッチ(端子間の隙間)もどんどん小さくなっています。基板もお金と時間をかければ簡単につながるのですが、量産製品なのでコスト面も考えつつ、最新の電子デバイスを盛り込み切るというところに、今回やりがいを見出しました。
デザインもそうですし、今回細かな機能要求がたくさんあり部品点数が結構多かったので、それを中に詰め込むための設計というところに、たいへん苦労しました。その分要求にかなったものができたと思います。
10年前、前身のモデルの製品開発を担当したのはメンバーの中で私だけなんですが、営業から聞いていたお客様の要望などに応えることができたのではないかと思います。
機能面はもちろんですが、業界として、従来はあまり重視されないデザイン面にも今回かなりこだわりました。営業のモチベーションが上がるということは、イコールお客様にいいものだと印象付けてもらえるチャンスだと思うので、そこはかなり重要だと思います。
今回、デザイン面だけでなく、機能面でも世界初の機能を要求し、それをたくさん実現していただきました。
かなり無茶な要求をしたと思っていますが、それがほとんど実現できたということは本当に凄いことで、開発チームの皆さんには、私の想像をはるかに超える苦労をされたと認識しています。
皆さんを大変誇りに思いますし、実際に売り上げを作るのはこれからなのですが、当社に所属して20年、本当にやってきて良かったと思います。
終わってみたら良い成果を出すことができたと思っています。
これまでにセンサを開発したことがないメンバーもいたので、チームをどうサポートするかが課題でしたが、それぞれのメンバーが互いに助け合いながらがんばってくれました。
その分時間もかかったのですが、結果として営業も納得してくれるような、いいものができたと感じています。
視野を広く持つことで、
良い仕事にめぐり会うチャンスが広がる
− 学生のみなさんへのメッセージ
一番伝えたいのは視野を広く持ってほしいということです。
それぞれの専門分野を勉強されていると思いますが、そこだけを見ているとなかなか世の中に通用するものは出てこないと思います。
なので自分の専門は一本筋を通してもいいけれど、いろいろなこと、まったく関係のないことも含めて経験したり、見聞きしたりすることを大事にしてほしいと思います。
我々の扱っている工場向けのセンサは表に出てこない業界だと思います。
皆さんが見ておられるテレビとかYouTubeで露出されている業界以外にも、多くの業界が存在していて、そこにもとても魅力的な仕事があるので、視野を広げて就職活動をされるといいと思います。
仕事というのは一人でやることではなくて、チームであったり会社ぐるみであったり、みんなで力を合わせることで大きな成果を上げることができます。 こういう形で良いチームにめぐり会えたら良い仕事ができるし、何事にもチャレンジしてみることでチャンスをつかめると思います。
今回開発したセンサは光電センサと呼ばれるもので、センサの黎明期から存在するものです。
電球と光電管から始まって、LEDが実用化されて、電球がLEDに置き換わり、今回は表示部分が有機ELパネルに置き換わって時代とともにどんどん進化しています。
これが最終形ではなくて、その時々に応じて最新の技術が出てくると思うので、学生の皆さんには、柔軟な発想でもっと製品を進化させていってほしいし、そういう方が出てくることを期待しています。
工業用センサはすごく地味で普段目にすることもないと思います。
ソフトウェアの観点からすると、例えば家電製品やスマートフォン、カーナビなど、もっとわかりやすい業界がたくさんありますが、センサの開発はやってみると実に面白いんです。
ぜひチャレンジしてほしいと思います。
学生時代に学んできたことがすべて役に立つとは限らないので、入社後も新しいことを覚えていくという姿勢で取り組んでいってほしいと思います。
このチームでは私が一番若いですし、経験も一番浅いのですが、どういう報告をすればいいか、人にどうすればわかりやすく伝えられるか、相手がより助け舟を出しやすいようにするには、どう伝えればいいかということが大事ではないかと仕事を通じて思いました。
わからない時や行き詰まった時には先輩や周りの人達が助けてくれます。
学生のみなさんは社会人になることに不安な気持ちがあるかもしれませんが、自分で解決できない時にはどう助けてもらうかを、まず意識してみると気持ちが楽になると思います。